有機EL 2013 4 6
書名 有機ELに賭けろ! エレクトロニクスの主役は無機から有機へ
著者 城戸 淳二 ダイヤモンド社
この本のタイトルを見て、
多くの人は、有機ELテレビに関しては、
先行するサムスンやLGを見れば、
「日本の電機メーカーが、
有機ELテレビに取り組んでも、
もう間に合わないのではないか」と思うかもしれません。
しかし、著者は、
「有機EL開発は、まだ二合目に過ぎない」と言っています。
もはや技術的に完成してしまった観がある「無機」に比べて、
「有機」の分野は、将来、有望な分野です。
テレビだけでなく、半導体も太陽電池も、
「有機」の技術を使えば、劇的な変化をもたらすでしょう。
照明だって、今は、LED照明が流行していますが、
本当は、LEDは、室内照明には向いていません。
それは、その構造を考えれば、わかることです。
LED照明は、小さな点から点状に強い光が出てくるのです。
これが、照明に適しているとは思えません。
有機ELの技術を使って、照明を作ると、どうなるか。
有機ELでは、点状ではなく、面自体が光を発するので、
眼にとっては、優しい光となります。
しかも、光の成分は、太陽光に近いものがあります。
「どうもLED照明は苦手だ」と思っている人は、
まだまだ自然の感覚が残っている人かもしれません。
このように、「有機」の分野は、有望ですが、
日本企業において、「撤退」の話は聞いても、
「参入」の話は、あまり聞くことはありません。
今、この分野に真剣に取り組んでいるのは、
韓国のサムスンやLGぐらいでしょう。
「2011年は、テレビ敗戦の年として記憶されるだろう」と、
日本経済新聞は書いていましたが、
実は、日本の電機メーカーの「本当の敗戦」は、これから始まるのです。
しかし、そもそも、有機ELの実用的な技術は、
日本人の研究者が開発したものです。
それなのに、韓国の企業が先行しています。
どうして、こんなことになってしまったのか。
それは、日本企業が「サラリーマン社長」ばかりになってしまったからです。
定年近くなって社長になれば、
誰だって、「失敗を避け、責任は取りたくない」となります。
そうなると、常に「他社と横並び」となります。
「他社がやれば、我が社もやる。他社がやらなければ、我が社もやらない」
これならば、失敗はありません。
さらに、サラリーマン社長は、社長の決断というよりも、
「取締役会の総意」を求める傾向があるでしょう。
これならば、失敗した時、全員の責任となるからです。
(実際には、結果的に誰も責任を取らない「無責任体質」となります)
それに比べて、海外の企業の社長は、妙に若い。
「ひょっとして40代ではないか」と思うほど、若く見えます。
こういう年齢ならば、たとえ大失敗しても、また再起できます。
だから、大胆な経営判断もできるでしょう。
一方、日本企業の方は、定年近くなって社長になっています。
これでは、最初から勝負はついています。
「技術で勝ってビジネスで負ける」
これが、今の日本企業の特徴です。
考えてみれば、日本の電機メーカーに、
まだ創業者が残っている時代は、圧倒的に強かったと思います。
日本の電機メーカーが弱くなったのは、サラリーマン社長が出現してからでしょう。
音楽と経営 2012 8 18
経営に音楽は必要か。
多くの企業には必要ないかもしれませんが、
たとえば、ソニーは、どうでしょうか。
少なくとも音楽に関係がある企業は、
経営に「音楽的なセンス」が必要になるでしょう。
意外にも音響効果が高かったホテルのラウンジ。
ぼんやりとコーヒーを飲んでいたら、
バッハのヴィオラ協奏曲が始まったのです。
予想外の生演奏にコーヒーの味も忘れて聞き入ってしまいました。
なんとなく軽井沢に行きたくなって、
そこでヴィオラ協奏曲に聞くことになるとは驚きでした。
日頃、ソニーの将来を心配している私は誘われたのでしょうか。
大賀典雄氏を偲んで。
軽井沢町には、軽井沢大賀ホールがあります。
(参考)
大賀典雄氏(1930年-2011年)
学歴 東京芸術大学 ベルリン国立芸術大学
ソニー社長、最高経営責任者(初代)
1959年、盛田昭夫・井深大に誘われてソニーに入社。
入社して、しばらくの間は、バリントン歌手としても活動していた。
広告部長とデザイン室長を兼務し、現在のソニーブランドの礎を築いた。
「SONY」ロゴのデザインを手がけたり、
トランジスタラジオ・テープレコーダーなどの製品に、
インダストリアルデザインをいち早く取り入れる。
その思想は、現在も「ソニーデザイン」として受け継がれている。
(以上、ウィキペディアから引用)
誰も口に出さないが、誰もが思っていることは、
大賀典雄氏がいなくなったら、ソニーは傾いたということです。
ソニーは大賀典雄氏を失って、単なる電機メーカーになってしまった。
もしかすると、大賀典雄氏の精神を引き継いだのは、
アップルのスティーブ・ジョブズだったかもしれません。
そのスティーブ・ジョブズもアップルから去りました。
今の経営陣は、天国の大賀典雄氏の声を聞くことはできないでしょう。
いや、大賀典雄氏は、こう言うかもしれません。
「単なる電機メーカーになってしまったソニーに、
私の居場所はない。だから話すこともない」と。
もちろん、天国で安らかな日々を送っている大賀典雄氏も、
ソニーの現状を見て、心穏やかではないでしょう。
今のソニーに必要なのは、
リストラでもなく、新製品でもなく、音楽的なセンスでしょう。